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2008年3月 1日 (土)

よい子 わるい子  フー

 「ラジオで、昔、地下に住んでいた青年の名を聞いた。」と夫が言う。
 それは、コンビニの金を盗もうとして盗めず捕まったという、なんともおそまつな事件の犯人の名だった。
 その青年は子どもの頃、親がうちの部落に中古の家を買って町から引っ越してきた。引っ越してすぐ親戚をよんで家の披露をしようとしたが、親戚がこなかった。とか、商売で商品を売り込みに行き住所を言うと断られたとか、わたしは部落の出ではないのに差別されたと、その青年のかあちゃんが嘆いていた。
 金もうけにあせった親がマルチ商法にひっかかり、一家離散のような形でその青年と家族は地下を出た。しばらく消息がわからなかったが、20代になってから折に触れ地下の友達を訪ねてきていた。
 
 「あの子は本当はええ子なんよ。親が悪いんよ。それはようわかるけど困ったもんじゃ。しょっちゅう部落に遊びにくる。ほんと、わるい子ばかり、部落に帰ってくる。ええ子は帰ってこん。」と、その青年のうわさ話を大きな声でおばがする。

 ほんとにわるい子ばかりが帰ってくるのか、統計などないが、おばの気持ちの中にある卑屈さがそれを言わせているのだ。
 ほんとによい子は帰らないのか、おばの地下から出たいという願望がそれを言わせる。

 社会の抑圧にさらされると人間はゆがむ。ほどよいゆがみ、困ったゆがみ。それが個性と笑えているぶんには幸せだ。
もう30歳になろうとするその青年のゆがみは、本人のせいというにはかわいそ過ぎる事情がある。それでも生きていかなければならない。

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